YAHAMA FT50
はじめてのフルレストア
開店間もないころ、年でいえば2008年、はじめてフルレストアのご依頼をいただいた。このころはヴィンテージバイクだけをやりたいけれど、そんなことを言っていられない、いただける仕事はなんでも無理して受けていたころなので、このご依頼をいただいたときはとにかくうれしかった。
しかしながら、僕が店をはじめるまでにしばらくバイクの仕事から離れていたこともあり、塗装やメッキなどフルレストアでお世話になる業者さんに連絡を取るところからだった。幸い以前勤めていたときにお世話になっていたほとんどの業者さんに取引のお願いができた。
ちいさなDT1を作る
ベース車両は2台のFT50
いいとこを取りつつ、1台はフルレストア、もう1台もそれなりの状態で活かす。
オーナー様はAT1もお持ちで、これも合わせてDT1のミニチュアのようにしたいということでカラーリングもDT1のように。
気持ちよくお仕事していただけるように
すべてを分解して、素材ごとに分けて洗浄と下処理。
メッキ、ウレタン塗装、粉体塗装、シート張替え、インナーチューブ再メッキ、
すべての業者さんに気持ちよく仕事していただけるように、しっかり洗浄して託します。
業者さんにお願いしている間にエンジンを手掛ける
エンジンは全分解後、洗浄。
シリンダはブラスト後、耐熱塗装。
シリンダヘッドは、アルミナののちガラスビーズでブラスト。
ケースは同じくガラスビーズまでブラストの後、研磨で、自然な光沢を出します。
ロータリーバルブのエンジンはとても好きなエンジン。
作業するのに手間は増えるけど、走りの力強さはかなりの魅力。
さすがの仕上がり
インナーチューブの再メッキ、粉体塗装が上がってきました。
今回はフレーム以外にアウターチューブやフェンダーまでも粉体塗装!
粉体塗装はパテが入れれませんから、下地の素材が良くてこそできること。
(粉体塗装の上にパテ、ウレタン塗装は可能です)
いよいよ組み立てへ
車体が小さいので、カートの上で組み始めます。
ボルトひとつひとつ、ゴム部品もひとつひとつ
配線はすべて作ります。配線の色、カプラなども純正品と同形状に合わせます。配線チューブももちろん純正同様に灰色で。
特注のオイルタンクデカール
オイルタンクはDT1のカラーリングに合わせて、デカールはDT1のデザインから数字を50に換えたものを特注で製作。オーナー様の遊び心に応えます。
シートもDT1のように
タックロールもYAMAHAロゴもバッチリ!
シート屋さん「様さま」でございます。
組み立てていくにつれ、眺める時間をつい長く取ってしまします。
ひとつ部品が付くたびに楽しい。
そして試乗に
完成後の試乗。それはもう、めちゃめちゃ楽しいです。
50ccであることをつい忘れてしまうぐらいよく走ります。
そして、この車体の小ささがとにかくかわいい。
見ると思わず、やさしい顔になってしまいます。
これが毎日目につくところにあると想像してみてください。
たまらないです。
当店でのはじめてのフルレストアは、およそ3ヶ月程度でオーナー様にお渡しできました。今だから言えますが、勤めでやっているときのレストア作業は少し窮屈いところがありました。自営業となっては、自分の裁量で、自分の責任で進めることになります。当然いいことも悪いこともすべて自分に跳ね返ってきますので、自分のモチベーションを高く保って、自分の納得のいくまで仕上げました。
世間的には小排気量の50ccお金を掛けてフルレストアすることはなかなか難しいことかもしれません。それだけにとても贅沢ですよね。小排気量のバイクはあまり大事にされないことが多いので、こうして仕上げて、また魅力を伝えていけるのは素直にうれしい。あらためてオーナー様に感謝いたします。ありがとうございました。
2008.OCT - 2009.JAN